アクティブラーニングで実験科目の教育を変える

実験科目において、自主的に学ぶためにはどのようにしたらいいのかをアクティブラーニングを使った授業の記録

メイラード反応実験の内容をジクソー法で理解する ジクソー法エキスパート活動

各班で担当をわけて

実験終了後、各班結果を発表し、
他の班の発表を聞いてわからなかったこと、疑問に思ったことをコメントシートに書いてもらいました。その結果は次の通り(主な意見)

・なぜによって反応が変わるのかわからない
・加熱しないとどうして反応しないのか
・反応の違いがありすぎて、何がどう影響しているのかわからない

 

他の班の発表を聞いてわからなかったことは、わからなかった事実としておいといて、まずは自分の班の実験結果がなぜそうなったのかを次週までに各自調べてくることとしました。
他の班の発表を聞いて単に結果を見ただけだと、反応の違いがありすぎて何が何だかわからない状態になるので、それぞれの班においては、ひとつの条件のみが変わっている組み合わせて実験をしており、その変わっている条件がメイラード反応にどう影響を及ぼしているかを調べるように促しました。そうすることによって、自分の班の原理が何かを導きやすくしました。


そして次の週に各自で調べた結果を持ち寄り班の中でディスカッションを行い、自分の班の実験結果がなぜそうなったのか意見をまとめました。

メイラード反応の反応を促進・阻害させる要因として、反応物質、pH、温度があります。
・反応物質→スクロースには還元性がないから反応しない
これはほとんどの班がOK
・pH→アルカリ性に傾くほど反応が促進される
これはわからなかった班もあり
・温度→反応は温度によって促進される
実験により加熱しないと反応しなかったのは明らか


この結果をもとにクロストークを行いました

 

 



メイラード反応実験の内容をジクソー法で理解する 方法編

メイラード反応(アミノカルボニル反応)は還元糖とアミノ酸が反応し、褐色物質であるメラノイジンが生成されます。

この反応に影響を与える要因として、反応物質、pH、温度があります。これらの要因が反応にどのような影響を与えるかを実験しました。

実験した組み合わせは次の通りです。

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また、各班で実験する種類は次のようにしました。
1班:ADG
2班:BEH
3班:CFI
4班:ABC
5班:DEF
6班:GHI
7班:ABCで加熱なし
8班:DEFで加熱なし(7班編成のときはこれを7班が担当)

実験終了後、
寒天とゼラチンの凝固作用の実験と同様のやり方でジクソー法を行いました。

 

 

 

寒天とゼラチンの凝固作用実験の内容をジクソー法で理解する 自己評価ルーブリックによる振り返り

レポート作成が終わったので、自己評価ルーブリックに従い、振り返りを行いました。

自己評価の内容
観点:凝固作用 寒天とゼラチンの違い

レベル1:寒天とゼラチンの主成分がわからない
レベル2:寒天とゼラチンの主成分が何かわかる
レベル3:寒天が固まらない、ゼラチンが固まらない条件が何かわかる
レベル4:寒天が固まらないのはなぜか、ゼラチンが固まらないのはなぜか説明ができる

自己評価は、
予習動画&課題取り組み前
予習動画&課題取り組み後
レポート作成後
の3段階にわけて自己評価してもらいました。

その結果は、

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以上のように、70%近くの人がレベル3以上になりました。レベル4はなぜそうなるのかを説明できないといけないため、このハードルを越えることができなかった学生がいたようですが、これについては今後の学習で越えることができると予想しています。

このように効果があった反面、レベル1あるいは2の状態の学生が30%程度おり、こちらのフォローアップの対策をしていかなければなりません。

大切なことは、理解不十分な学生が誰でどの程度かを必要なタイミングでわかることではないかと感じています。

 

寒天とゼラチンの凝固作用実験の内容をジクソー法で理解する レポート提出と振り返り

寒天とゼラチンの凝固作用の実験後、各班で自分の班の結果がなぜそうなったのかをまとめ(エキスパート活動)、その後、各班1名ずつがいるようにジグソー班をつくり、ディスカッションしました(クロストーク)。

これらの話し合いの後、実験レポートを作成し、自己評価ルーブリックに基づき振り返りを行いました。

実験レポートには、実験結果と考察の間に「他の班の結果を聞いてわかったこと」という項目を設けています。
この項目は、各自がクロストークから何を学んだかを明確にすること、そして他の班の結果や発表を聞いて重要ポイントをどうまとめるかを目的としています。
そして、そのうえで最終的な考察を書くという流れになっています。

そして、実験レポート提出の後に、振り返りを実施。
振り返りの結果のコメントをみると、他の班の意見を聞くことによって理解することができたというのが見受けられました。自分ひとりで調べると調べきれない部分もあり、その状態でレポート提出となります。それに対して教員からフォローアップは行いますが、なかなか知識として定着しません。
その点を改善するという意味においても、今回行ってよかったというのが率直な感想です、

 

自己評価ルーブリックの内容と詳細については、別途まとめて報告です。

寒天とゼラチンの凝固作用実験の内容をジクソー法で理解する クロストーク結果

各班のでのエキスパート活動によるまとめをした後に、ひとつのグループが各班1名いるようにジクソー班をつくり、クロストークを行いました。ここでは、各自(各班)から、結果となぜそうなったのかを発表し、グループ内で質疑応答など自由にディスカッションしました。

そしてクロストークの結果は!
ジクソー班は13グループ全て通して内容をまとめると次の通りでした。

キウイにはたんぱく質分解酵素があり、ゼラチンはたんぱく質のため、ゼラチンにキウイを入れた場合は、液体のままで全く固まらなかった。

ゼラチンにレモンを入れるとぷるぷるの状態で、何も入れないのと比べると柔らかかった。調理学の講義でゼラチンに酸を入れると固まらない、あるいはしっかり固まらないと習った。実験結果もその通りだったけど、なぜそうなるの原理まではわからなかった。

寒天の主成分はたんぱく質ではないため、たんぱく質分解酵素の影響を受けない。そのためキウイを入れたのは固まった。しかし、果汁をいれていないもの(BL)と比較すると柔らかくなる原因はわからなかった。

寒天にレモンを入れる場合、沸騰状態で入れると固まらないが、60℃まで温度を下げたら固まったのは、レモンを入れる時の寒天液の温度によって凝固の強度が変わることは文献でわかったが、なぜそうなるかまではわからなかった。

 

カオスと都市伝説で充満したクロストークもあった
エキスパート活動での班での意見のまとめを確認している時点では、原理としてありえない結果になったものがなかったにもかかわらず、クロストークのまとめをみると、えぇーーそれはありえないでしょ!というのがありました。*1 クロストークを傍らで聞いているとまさしくカオスであり、そこで導きだされた結果・まとめは都市伝説か!?というようなものでした。しかしながら、結果がどうであろうと、ジクソー法でのやり方を尊重し、ジクソー班でのまとめが原理としてありえない結果でも、教員側からはあえて何も言いませんでした。このクロストークを終えて、各自で実験レポートを書く際に、自分のいたジクソー班のまとめにふと疑問をもち、自分の力で調べて正解にたどり着くという環境を残しました。

 

主体的に取り組む
実験の結果とその原理をひとりで調べるとなると作業量も多く、結果調べられない・調べない→まとめとしての話を教員から聞くだけ→知識として定着しない→わからない→おもしろくない
という負のスパイラルになりがちです。

クロストークをせずに、エキスパート活動の段階でとめて発表でシェアというのも過去に試みたことがありますが、もう少し聞きたいとか、よくわからないという点があってもその場で質問できないまま→いまいちわからない という図式になります

今回のようにクロストークをさせると、わいわいがやがやとわからないとこを突っ込んだり突っ込まれたりしながら自らの意志で質問・疑問を投げかけており、そういうマインドが発生することが最も大切であり、まずはやってよかったと感じています。

 

 

*1:エキスパート活動の結果を確認した際にはそのような結論に至った班はなかったので、なぜこのようになったのかは不明。原因究明中

寒天とゼラチンの凝固作用実験 ジクソー法エキスパート活動

 

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上記のように班ごとに実験内容を変えて実験し、その結果を発表し、

 他の班の発表を聞いてわからなかったこと、疑問に思ったことをコメントシートに書いてもらいました。その結果は次の通り(主な意見)

・ゼラチン+レモンは固まったけど、寒天+レモン(沸騰状態で入れる)はぷるぷる
・ゼラチン+レモンは固まったというけど、ゼラチンに果汁を入れてないもの(BLと比べたら柔らかくぷるぷる)
・ゼラチンにキウイを入れると固まらず、液体のまま
・寒天+レモンで沸騰状態で入れるのと60℃まで冷やして入れるのとで結果が違う
・寒天・ゼラチンともに果汁によって固まり方に違いがある
・ゼラチンでレモンとキウイで固まり方に違いがある

 他の班の発表を聞いてわからなかったことは、わからなかった事実としておいといて、まずは自分の班の実験結果がなぜそうなったのかを次週までに各自調べてくることとしました。
そして次の週に各自で調べた結果を持ち寄り班の中でディスカッションを行い、自分の班の実験結果がなぜそうなったのか意見をまとめました。


◆正解を導きだしてまとめられた班の内容

・ゼラチンはたんぱく質であり、たんぱく分解酵素をもつキウイを加えると固まらない
・寒天は多糖類であり、たんぱく分解酵素の影響を受けないので固まる

 


◆惜しいあと一歩!

・ゼラチンにレモンを入れたものが、果汁をいれてないものに比べて固まり方が緩かったのはレモンに含まれている酸の影響

  →酸がどのように影響しているのか調べよう

・寒天にレモンを入れるときは、40℃~60℃の間で加えると固まるが、それ以上の温度で入れると寒天が凝固するのを邪魔する

  →寒天のゲル化のしくみを調べてそれにどのように影響するかを調べられたら最高☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒天とゼラチンの凝固作用実験の内容をジクソー法で理解する 方法編

寒天とゼラチンは加える果汁の性質によって固まったり固まらなかったりします。さらに、寒天とゼラチンは主成分が違うため、同じ果汁を加えても片方は固まるがもう片方は固まらないという事象が発生します。

実験では、各班全ての事象を実験で行うのがベストなのですが、時間的物理的制約や過去の経緯により、ひとつの班においては一条件での実験を行いました。
実際に行った条件は次の表のとおりです。

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さて、ここからがジクソーの展開になります
1.各班実験結果発表

2.各班の実験結果を聞いて、理解できなかったところ、疑問に思った点を、各自コメントシートNo1に記入して提出 (ジクソー法による理解度の促進効果を図るため)

3.次の授業までに、自分の班の実験結果がなぜそうなったのか、原理などを調べてくることを課題とした(調べた内容は実験ノートに記載)
→プレエキスパート活動

4.3.で各自が調べた結果を持ち寄って班での意見をまとめる→エキスパート活動

5.各班1名ずつで新たにジクソー班をつくり、自分の班の結果やなぜそうなったのかを発表、質問などディスカッションし、その結果をまとめる。→ジクソー活動
さらに、2のときに理解できなかったろこと、疑問に思った点が解決したか、理解できたか、やはりわからないところがあったか等コメントシートNo.2に記入して提出

6.各自実験レポート作成