アクティブラーニングで実験科目の教育を変える

実験科目において、自主的に学ぶためにはどのようにしたらいいのかをアクティブラーニングを使った授業の記録

食品中のビタミンCの定量 ピアレビュー方式で学習する その2 各自が考えた効率的な摂取方法を発表し意見交換する

実験結果をもとに、大根のビタミンCを効率よく摂取方法・献立をを考えることを課題とし、

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各自が考えてきた結果を班の中で発表し意見交換をしました。

意見交換するなかで、

他の人が調べてきた結果で、へぇーと思うもの・気づきを記録するとともに、自分の最終意見をまとめました。

結果的に、効率よく摂取する方法として挙がっていたものは次の通りでした。

みぞれ鍋

具だくさんスープ

大根サラダ

さっと炒める

大根おろしのまま

班の中で話あった結果、自分では思いつかないような、または調べられなかったことを知ることができて有意義だったようです。昨年までは自分ひとりで考えてレポートにしていましたが、今年からピア・レビュー方式を用いたことにより、学生自身にも気づきがあったようです。

 

なお、この単元を通して学んでほしい内容は、前期の講義で学習したビタミンCの性質を思い出すこと。ちょうど並行して行っている他の授業で人参の成分やおせちの紅白なますについて学習内容を照らし合わせる。

そして、効率的な摂取を考えたうえで、現実的にありえるのか?(その調理方法で必要量が食べられる? 調味料を使うことによるデメリットはないか?)などを総合して考えてほしくてこの方式での学習方法をとりました。

来年度にむけての改善点はあるものの、上記の理解は深まったと感じています。 

 

 

食品のビタミンCの定量 ピアレビュー方式で学習する その1 実験結果から理想的なビタミンC摂取方法を考える

大根を試料として、複数の条件(実際の調理で遭遇する条件)を加えた上で、ビタミンCを定量し、その結果をクラス内で共有しました。
結果は次の通り

(単位:mg/100g)

すりおろし直後 8.05-9.72

すりおろし24時間経過後 0.69-1.98

15分間加熱後  0.37-0.94

15分加熱した煮汁 0.89-1.88

人参を加えたもの 0.59-1.24

 

この結果を踏まえて、大根から効率よくビタミンCを摂取するにはどうしたらいいか献立を考えてくることを課題としました。

 

未知試料の分析 実践することにより自分の理解を認知する その3

各班で実験をし、 

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その結果をまとめたのち、 

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全クラスすべての班の分析結果のまとめ(画用紙に記載したもの)を貼り出し、投票大会をしました。

投票については、

論理的に分析できているもの、

わかりやすくまとめてあるもの

この2つでそれぞれ1人1票を、付箋紙に上記の項目と自分の学籍番号を書いて貼り付けていきました。

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この投票のあと、各自なぜそれを選んだのかと他の班への意見・アドバイスを振り返りと同じ要領で提出しました。

各自なぜそれを選んだのかは、意図すること(分析方法が論理的か、第三者がみてわかりやすくなっているか)に基づいて判断しているかを教員が確認するために、選んだ理由をコメントしました。

また、他の班への意見・アドバイスは、他の班の結果やまとめを見ることによって、今後自分たちが同じ場面になったときにどうしたらいいかを学習することを目的として行いました。

その中で私個人が興味深かった意見は次の通りです。

改行せずに続けて書くと見づらい

字の大きさや濃さなども大切だなと思った

 →改めて、見る人の立場になって見ると、見やすいところ、見づらいところを自分事として捉えることができます。この経験がないまま同じ場面に遭遇したら、卒業制作に取り組んで、そのわかりづらさを教える側がいっても理解しがたいはずです。それよりもこのような実体験を積む方が自分の血肉になるのではと思っています。

 

色を1色だでなく大事なところは色を変えていて見やすかった。

色ペンや色鉛筆を使えばいいかなと思った。

色ペンを使うとよい。文字だけだと読む気にならない。

 →実は色については特に指示はしなかったために、各班自由意志でやっています。来年年度はあらかじめバラツキがでないように指示したいと考えています。

 

図にしている班はわかりやすくてとてもよかった。

文字だけでなく図も入れたほうが読みやすいと思った。

 →図というのはフローチャートを意味しています。こういう表し方があるということを学べたという点で効果はあったと思います。

 

未知試料の分析 実践することにより自分の理解を認知する その2

調べるべき未知試料が何かを説明したうえで、

 

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まずは、各自でこれらの試料を調べるにはどのようにしたらいいか、その時何がどのように反応するかを列挙するようにしました。

そのうえで、各班それぞれが列挙した内容を持ち寄って分析スタート

ただし、ひとつの実験が終わるごとに、その結果をみて、それから次の実験をどうするかを考えるように指示しそれを記録することとしました。

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そして、5つすべての試料かわかったら、どのようにして導きだしたのか、第三者がみてわかりやすいように、画用紙にまとめました。

未知試料の分析 実践することにより自分の理解を認知する その1

最後の実験は、今まで学習したことが「できる」になっているかを確認する内容として、未知試料の分析を行います。

●内容

5種類の試料(水溶液)が、何の水溶液かを今まで習った実験方法を用いて調べます。

試料A・B・Cそれぞれは
炭水化物(でんぷん)、糖(グルコース、スクロース、ラクトース、アラビノース)、たんぱく質(ゼラチン)、アミノ酸(グリシン、プロリン)、水のどれか1種類の水溶液。

試料X・Yそれぞれは次の組み合わせのうちのどれかが該当
糖+アミノ酸、糖+たんぱく質、炭水化物+アミノ酸、炭水化物+タンパク質

調べる方法として、論理的科学的な道筋をもって行うことととしました。なぜならば、授業で行ったすべての反応実験を行えば、それぞれの試料が何かがわかりますが、それは論理的でも科学的でもないからです。

分析して調べるのは、班単位とし、もちろん班によって、A・B・C・X・Yの中身は異なり、どのような過程を追って分析を行ったかを記録させました。

食品の有機酸について ピア・レビュー方式で学習する 自分の最終意見と他の人の意見で興味深かったもの

与えられた課題を調べて、

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班の中で発表しました。

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班の中での発表の結果、班の中で意見が違ったというものをあまりなく、自分の意見が変わった学生もいませんでした。 班の他の人のコメントで興味深かったものとしては次の意見がありました。

・お酢を作るには発酵が必要だとわかった

・牛乳が腐敗すると酸度が上がる、乳酸が増える

 

今回の目的は、その食品の製造方法を知ることにより、設定されている基準値を“なるほど”と納得することです。

お酢は、発酵により酢酸が作られます。そのため一定数値以上の酢酸がないと、お酢になりません。そのため、酸度の基準が ○%以上 となっています。(○の数字の部分は原料により違いがある)

牛乳は、腐敗をすると牛乳に含まれている乳糖が分解されて乳酸が生成されます。そのため、腐敗の指標を乳酸の多少で判断するため、0.18%以下 (ジャージー種の牛乳は0.2%以下)となっています。

ヨーグルトは乳酸菌による発酵で作ります。これにより乳酸が生成されるため、乳酸酸度は、各社自主基準ですが設定されています。

つまり、各食品がどのように作られているかを学ぶことは、食品学の基本であり、その知識があってこそ、法令の数値の内容を理解することができます。

自分で調べるだけでは、時間的な制約により、十分に調べきれないまま終わってしまいますが、班の中で調べきれてない部分を発表という形で補完しあうことによって、不足していた知識のピースを埋めることができたようです。

さらに、発表をするという過程を踏むことによって、調べた内容が知識として定着していなかったことを改めて自覚した生徒もおり単に調べて写す(←よくあること)だけではダメなんだということがわかったというのも本人にとっても大きな収穫だったと考えます。

食品の有機酸について ピア・レビュー方式で学習する 自分で調べた結果を班の中で発表

与えられた課題を自分で調べた後、

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班の中で発表し、意見の相違があるのかないのか、相違があるとしたらどこがどう違うのかなどを話しあうことにし、班の中で自分が調べた結果と違う意見を言った人があったら、それを記録しておくこととしました。
【班の人の意見】ではこのようなことが書かれていました

牛乳が腐敗すると酸っぱいにおいがする、ドロドロになる
牛乳が腐敗すると乳酸が増える→微生物が乳糖を分解するから
牛乳が腐敗すると酸度が上がる
牛乳が腐敗すると乳酸が増える
ヨーグルトは新鮮な牛乳に乳酸を加えて発酵させる

さて、上記のような【班の人の意見】から各自自分の意見はどうなるのでしょうか。また、これらから何を考察したのか、ここが重要ポイントです。
なお、酸度の基準値については、最終提出されたものをみると牛乳については正確に記すことができたものの、酢酸の酸度については正確に記してありませんでした。文章を丁寧に正確に読むというトレーニングが必要だということが改めてわかりました(汗)